キャロル・ヘイニー その6 「病」2007年01月04日 01時33分50秒

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「パジャマ・ゲーム」(1957)から「スティームヒート」

舞台で主演したジャニス・ペイジ以外、ほとんどそのままのキャストで撮影されたため、ヘイニーのせりふと演技を知ることができます。もちろん踊りも演技もみごとですが、そのやせようには愕然とします。別人かと思いました。
 映画の撮影中、彼女の糖尿病が明らかになります。疲労から撮影中何度も倒れ、現役のダンサーとして長くやっていけないことを自覚したといいます。

 ダンスを見ると動きは軽快ですが、体のせいか彼女の特質であり長所でもある重みが消えています。フォッシーの振付自体そういうものを要求していないでしょうが・・・・。(これについて書きたいことはありますが、いずれフォッシーの項で述べることにします)

 舞台の「パジャマ・ゲーム」はマスコミや批評家の大絶賛をあび、ヘイニーは「今シーズンの大発見」とまで讃えられます。お祝いにはソール・チャップリンやケリー、ドーネンらもハリウッドからかけつけました。最終的に、1955年度のトニー賞ミュージカル部門の最優秀助演女優賞の栄誉にも輝いています。

 演技力が未知数だったため、当初の構想では彼女の役はせりふが三行の小さなものでした。ところが演じさせてみるとコメディーセンスにあふれ、他の役者がやるとつまらないセリフも、彼女だと大うけします。そこで他の役まで吸収して彼女の役がふくらみ、最終的な「グラディス」ができあがったのです。主演のジャニス・ペイジは自分の役まで盗られるのではないかと不安に陥ったそうです。

 他方、この時期、ロジャー・イーデンスから映画「ファニーフェイス」のヒロイン役を提案されていますが、結局彼女の顔やスター性では主役は無理と判断され、オードリー・ヘプバーンにお鉢が回ることになります。
 また、ハリウッドの大プロデューサー、ハル・ウォリスが評判を聞きつけ舞台を見にやって来ます。ところが彼女は足首を捻挫して休演中。代役のシャーリー・マクレインの方が目に留まり、映画界に招かれることになります。
皮肉な話です。

 ともに「スティームヒート」を踊り、友人でもあるバズ・ミラーは言っています。
 「いざ喝采を浴びたり世間の注目を集める段になると、必ずキャロルは具合が悪くなる。こんなに批評家からほめられ、ハリウッドからはプロデューサーが来る。すると足首を痛める。そういう風になってるんだ。みんなそうなるだろうと思ってたよ。まあこのなぞを解くのはフロイトにしかできないだろうね」