シド・シャリース その2 「上達」2006年12月13日 00時39分00秒

シドとチャンピオン
 さて、長々と彼女の映画界入りまでの経歴を書いてきました。バレエ・リュスやそれぞれの人々のバレエ史上の位置づけについてここでは詳述しませんが、一言で言えばシド・シャリースはクラシック・バレエの正統を継ぐ人々から本格的な訓練を受け、さらに皆から嘱望されるだけの素質を備えた踊り手であったということです。その彼女が結婚を機にキャリアの中断を余儀なくされ、それがために映画界に足を踏み入れることになったのも皮肉な巡り合わせです。

 当然、初期の彼女に期待された役目はあくまでバレリーナあるいはバレエ風のダンスの踊り手としてのものでした。「ジーグフェルド・フォリーズ」(1946)で泡の中を踊るバレエ、「雲、流れ去るまで」(1946)でのガワー・チャンピオンとの「煙が目にしみる」のナンバー(写真)、「Words and Music」(1948)のバレエシーンなどから、初期のシド・シャリースの実力がを見てとれますが、さてどう言ったら良いのでしょう。
 映画により多少異同はありますが、顔はまだ丸みが残って幼く、表情は頼りなげで、何らかの意思を表現できるレベルではありません。肉体からは後期のダイナミズムやセクシーさは感じられず、胸から腕にかけては少し縮こまったような印象です。それぞれの踊りによって多少の優劣はありますが、格段の個性もなく、まあ、「そこそこの実力がある人のそこそこのダンス」としか言いようがありません。

もちろん、エレノア・パウエルが時に見せるバレエに較べれば、ずっと上等ですが。