ヴェラ=エレン その5「出会いと別れ」 ― 2007年10月06日 22時34分49秒
1942年、ハイタワー兄弟と。
中央がロバート、右ルイス。
”Panama Hattie”公演期間中にヴェラ=エレンは結婚します。相手は”Higher and Higher”出演時に知り合ったダンサーのロバート・ハイタワー。新郎23歳、新婦19歳でした。
ロバートは兄(?)ルイスと「ザ・ハイタワーズ」を結成し、恵まれた体を生かしたアクロバティックなダンスで高い評価を得ていました。しかし母アルマには、この結婚が気に入らなかったようです。主な理由は、才能ある娘にとって物足りない相手だったことや、彼の気の短さや乱暴な面が心配だったことです。
ヴェラ=エレンは1942年6月、ロジャース=ハートの”by Jupiter”に出演。レイ・ボルジャーのダンスの相手を務め、一緒に出演したハイタワー兄弟ともども批評家から高い評価を受けます。
続いて1943年11月からは、再びロジャース=ハートの"A Connecticut Yankee”に出演。1927年に上演された作品の再演ですが、キャメロットの侍女という大きな役をえて様々な新聞・雑誌で絶賛され、ハリウッド行きのきっかけともなります。
彼女の元へは本公演前のフィラデルフィア公演中から、映画会社のスカウトが次から次へとやって来ます。最終的にはサミュエル・ゴールドウィンと契約することになりますが、出した条件は三つ。「それなりのギャラ(週給千ドル)」、「大きな役」、そして、「スクリーンテストは無し」でした。
この時期、ヴェラ=エレンに対する周囲の評価や印象はどのようなものだったのでしょうか。
まずは1944年2月の「ルック」誌を見てみましょう。そのシーズンに大活躍した四人の新人女優を選んでいますが、その四人とは・・・・ジョーン・マクラッケン(オクラホマ)、ソノ・オーサト(One Touch of Venus)、ベティ・ギャレット(Jackpot)、そしてヴェラ=エレンです。
さらにベティ・ハットンと比較し「(ヴェラ=エレンは)ベティのような力みがなく、もっと観客の気を引きつける」とも記されています。
上記四人のうちの一人ベティ・ギャレットは、後に当時を振り返り次のように語っています。
「彼女は素敵だったわ。小柄で、元気が良くて朗らかで、ベタベタしてなくて。映画入りしてからみたいにガリガリにやせてもいなかったしね。"A Connecticut Yankee”じゃ本当に素晴らしかったの。それからダンサーとして足が最高にきれいだったわね。」
知人のジム・シュレーダーはこの頃の彼女を次のように証言しています。
「顔も体も丸くてとても女性らしかったし、みずみずしくてとてもきれいだったな。いつも一生懸命で、話していると目が輝いてたんだ。動作はとても生き生きしていたよ。」
当時の彼女は、まだ母親のダイエットの重圧に苦しむこともなく、食欲も旺盛でした。標準的な体重を維持しながら脚や肩、背中の筋肉が発達していたため、まるで女性ボディビルダーのような体だったとも言われています。
さて彼女には芸能界での生き方のロール・モデルにしていた人物がいました。当時人気のあったヴェラ・ゾリーナです。ヴェラ・ゾリーナはクラシック・バレエの出身ながら、ミュージカル、オペレッタ、映画と何でもこなす人でした。彼女にあやかり、しかも自分の名前を目立たせるため、ファーストネームにハイフンをいれて芸名にしたと言われています。
映画界入りに際しての母親のマスコミ向けの話では、「娘が生まれる前にハイフンのはいった名前が映画館の巨大なライトに照らされている夢を見た」ことになっています。しかし実際は”By Jupiter”のころからこのハイフン入りの名前が使われていたようです。
彼女の結婚生活はそれなりにうまくいっているようにみえました。しかし、ヴェラ=エレンの家族、特に母のアルマは、ロバートが娘をキャリアアップのための踏み台にしていると考え、彼女の人格がないがしろにされているのではないかと心配したようです。
徴兵された兄のルイスがノルマンディーで戦死すると、ロバートは仕事の比重を自分の好きな飛行機の操縦に移していきます。その結果、ヴェラ=エレン自身が家族の稼ぎ手にならざるを得ず、結婚は重荷となっていきます。
さらに、ロバートのやきもちは乱暴な性格ともあいまって大きな問題になってきます。彼女は恐怖感を抱いて母のところに逃げ込み、離婚届を準備しました。
ジム・シュレーダーは言っています。
「彼らの離婚には驚かなかったよ。役者同士の結婚は二人が上を目指して努力しているうちはうまく行くんだ。でも片方がブレイクすると結婚生活に緊張関係が生まれるんだ。離婚も珍しくなくなるのさ。」
1944年、シカゴ公演終了後、彼女は映画界入りします。
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