シド・シャリース その3 「上達」2006年12月14日 00時50分57秒

シド・シャリース ブロードウェイ・バレエ


「雨に唄えば」から「ブロードウェイ・バレエ」の一シーン。ギャングの情婦です。
ダンスではなく立ち姿を出してみました。

 ここに至るまでにリカルド・モンタルバンと共演したいくつかの作品がありますが、「ザッツ・エンタテインメントPart3」に「The Kissing Bandit」(1948)でアン・ミラーと踊るスペイン舞踊風のナンバーが入っている以外は見ることができないので、とりあえず「雨に唄えば」あたりをこの人の上達における「中期」と勝手に名づけてみました。

 一応このナンバーで彼女のミュージカル映画でのペルソナ----つまり、硬質で冷たい美貌に滲み出るエロティシズムとダイナミックでスケールの大きいダンス----が形作られたと言われています。言い方を変えれば、「そういうスター」として制作者側が彼女を使っていけるだけの映画界での地位が築かれたと言っても良いでしょう。しかしまだこの頃の踊りの実力は十分でないと私は考えています。

 そもそも「ブロードウェイ・バレエ」の情婦役はジーン・ケリーがキャロル・ヘイニーを使うつもりでいたのを、アーサー・フリードらに反対され(ヘイニーにはセクシーさが欠けるというのが理由)、しかたなくシド・シャリースにしたという経緯があります。キャロル・ヘイニーはずいぶん落胆したようですが、いやな顔もせず稽古をつけてくれたとシドは後に語っています。
 キャロル・ヘイニーがセクシーでないかどうかは、セクシーさの階層や好みにもよりますが、遠くで見る劇場と違い、顔が大写しになる映画ではやはりシドのほうが適役であったかもしれません。ただ、この時点でのショーダンスにおける実力を考えれば、少なくとも踊りに関してはヘイニーのほうがうまかったであろうと考えるのが順当でしょう。

 べつにこのナンバーでのシド・シャリースのダンスが下手だと言うわけではありませんが、その表情や身体からはまだ後に認められるような魅力が感じ取れません。
 上の写真を見ても、中心軸が微妙にぶれて、体の重みが重力に任せて沈むでもなく、天に向かって伸びていくでもなく、中途半端な状態です。表情にもまだ、はにかんだような曖昧さが残っています。ケリーと踊る場面でもそうですが、体の輪郭が硬く、内面や身体のはちきれるような魅力が体の輪郭を破って観ている者に十分に届く域には至っていません。


 完成にはもうしばらくの時間が必要です。

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