ジーン・ケリー その3 「膨張する肉体」2006年11月07日 01時37分34秒

kelly and Oconnar

さてこの写真はドナルド・オコナーとの共演。「雨に唄えば」から”Moses Supposes”のナンバーです。なかなかちょうど良いシーンがキャプチャーできませんが、先ず観て行きましょう。

 ここでは上半身に注目して下さい。その時々の動作が入るので解かりにくいかもしれませんが、オコナーの上半身がスッとした感じなのに比べ、ケリーの方は「ムーッ」と質量感を持って何か語りかけてくるような印象を受けます。胸の中央、胸骨上に、高さで言えば喉仏とみぞおちの中間かその少し上あたりに、この人は何か強いエネルギーの塊のようなものを持っています。彼が動く時、まずこの部分から動き出して波動が上方の喉の方向と左右に向かって行きます。これがケリー独特の「胸で何かを語りかける」動きの原動力です。この動きの結果、顎も随分上がって顔はほとんど上を向いていますが、これが彼の明るさを観ているものに印象付けるのです。彼の顔自体もさわやかで明るいのですが、本当に心の底からの喜びを表現しているのは、この上胸部から喉にかかけての開放された躍動感です。ちょうど、胸と喉の境目に大きな口があって、それが大きく開かれて笑っていると想像してもよいかもしれません。

 胸の中央を発信源に左右に向かう波動は胸の側面というのか、脇の下というのか、このあたりに伝わり、一見胸が左右に膨張して行くような感覚を与えます。この動きは一部腕の動きにも影響を与えますが、この常に続く動的な膨張感が、胸の筋肉の質感とあいまって、いつ見ても絶えずどこかしら動いている印象を与え、ケリーの踊りの動的な面白みにつながっているのです。